学校法人朝日学園 明生情報ビジネス専門学校

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候補

 昔、ある国で日本に研修に派遣する学生を選ぶことになった。

 試験を行い、予想通り、2人の学生が最終候補になった。彼らの名前を、ジョンとマイケルとする。

 私は、ジョンの方に日本に行ってほしいと思っていた。成績も優秀であるが、それ以上に人間的にバランスがとれ、将来その国で重要な仕事をする人物であると確信していたからだった。もう一人のマイケルももちろん非常に優れた学生だったが、人間の格はジョンのほうが上だと思った。

 ところが、最終試験でジョンは勘違いをして点数が下がり、マイケルが1位になってしまった。

 私はどうしようかと思った。一晩真剣に悩み、結局、マイケルを日本に行かせることにした。成績を偽造して、ジョンを行かせるのは私の良心に反し、これからずっと嫌な思いをすると考えたからだ。

 その後も、このことはずっと考えた。そして、あるときから私はあの時、間違えていたと思うようになった。

 ああいう状況で、教員は客観的に一番いいと思われる状況を創出すべきだった。たとえ良心の呵責を感じたとしても、すべて自分ひとりの胸三寸に収め、ジョンを行かせるべきだった。私一人が泥をかぶればよかった。

荒川友幸
東京明生日本語学院 養成科主任
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