学校法人朝日学園 明生情報ビジネス専門学校

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連載第6回~初級の教え方~「教え方の流れ」その2

「わからせる」「おぼえさせる」「つかわせる」

文型練習は、「わからせる」「おぼえさせる」「つかわせる」の順で進行します。

一般的な言い方では、

「わからせる」=「導入」

「おぼえさせる」=「パターンプラクティス」

「つかわせる」=「コミュニカティブ・アクティビティ」となります。

 

「わからせる」は文字通り、言葉や文の意味を学習者にわからせることです。

「おぼえさせる」は、いろいろなテクニックを使って、学習者に「わからせた」ばかりの言葉、文型を繰り返させ、覚えさせることです。

そして、状況設定するなどして「覚えさせた」文型を実際的な場面で「つかわせる」。

ちなみに、「コミュニカティブ」とは、「コミュニケーション」の形容詞形で、「意味、情報の伝達を目的とした」というような意味です。

 

以下、「わからせる」「おぼえさせる」「つかわせる」を順番に説明します。

「わからせる」

「わからせる」作業は簡潔、明瞭に行います。

語学学習は、教員の説明の時間と学習者の練習の時間の総和です。

教員の説明の時間が長くなるとその分学習者の練習の時間が減ってしまいます。

だから、教員の説明の時間は、短ければ短いほどいいわけです。

もちろん、ただ短ければいいわけではなく、その説明はとてもわかりやすいものでなければなりません。

海外の、その教室にいる学習者の全員が同一母語を共有している状況では、導入は学習者の母語を使って行ってもかまいません。

翻訳によって導入を行えば、学習者にとってわかりやすい説明を行えるし、時間の節約にもなります。

また、導入する文型、文法事項に関連した深い説明を行うこともできます。

ただ、この場合の当然の前提は、教員が学習者の母語の会話能力を持っていることです。

日本国内の、一つの教室に異なった母語を持つ学習者が混在している場合、直接法の授業を行うことになります。

教員が、多国籍の学習者のすべての母語の会話能力を持つのは不可能だからです。

直接法を金科玉条のようにして、直接法で教えていれば、それですべてがうまくいくと考えている人がときどきいますが、私はそうは思いません。

直接法は、必要に迫られて編み出された精緻な技術ですが、その技術をどれほど巧みに使ったとしても、初級レベルの学習者が学習の過程で抱く疑問のすべてに答えることはできません。

「わかりやすさ」「手っ取り早さ」という点で、直接法は翻訳法に敵わないのです。

初級レベルで提示する語彙の多くは使用語彙(意味がわかっているだけでなく、使えるようにならなければならない語彙)なので、ときに学習者の便宜を図って、まとめてたくさんの言葉を導入することがあります。

 

たとえば、服装、職業、家や部屋に関する言葉などのリストです。

トピック別の語彙集で、学習者が必要に駆られたとき必要な言葉をかんたんに探せるようにとの配慮で渡します。

また、授業中にコミュニケーションをするとき、それらの言葉のどれかが必要になるだろうとの予測の下、渡す場合もあります。

こうした場合、ことばの意味をいちいち説明していると大量に時間を消費し、授業が大幅に遅れてしまうので、語彙集には学習者の母語で翻訳をつけます。

それをまず配布し、MM1(教員が新出語を1回発声、学生も全体で1回発声)で読みます。

語彙表を作らないで新しいことばをどんどん導入すると学生は過剰負荷で、理解を放棄してしまいます。

荒川友幸
東京明生日本語学院 養成科主任
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