学校法人朝日学園 明生情報ビジネス専門学校

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連載第8回~初級の教え方~「わからせる」その2

初級文型を「わからせる」

次の文の導入について考えます。次の文を直接法でどのように導入したらいいでしょうか?

1.はじめまして。

2.水が飲みたいです。

3.東京タワーよりスカイツリーのほうが高いです。

4.私は日本語が話せます。

1.はじめまして。 の教え方

1の「はじめまして」を直接法的に提示できる状況は1回しかありません。

すなわち、教員と学習者が初対面するときです。

初級の授業の第1日目、期待に目をきらきらさせている学生たちの前に立ちます。

教員は満面の笑みを浮かべ、学生たちを見回します。

 

そして、いきなり、「はじめまして(ゆっくり、はっきり、大きい声で)。

私は自分の名前です(「私」を発話したところで胸を軽く叩き、自分の名前を言うときは胸に付けたネームカードなどを示す)。

 

どおおおぞよろしく(直感的に意味をわからせるため、お辞儀などをしながら気持ちを込めて)。」と発話します。

 

「はじめまして」という言葉を理解させなければならないようなクラスは、完璧なゼロ初級なので、直接法の状況では、教員と学習者の間に共通の言語はありません。

 

教員が前述の発話を行うと、学習者はきょとんとします。

それでも教員は自分のペースを崩さず、満面の笑みを浮かべたまま、発話を繰り返します。

 

この時点で学習者は、上記の発話が初対面の挨拶であろうということを推測します。ここで教員は反復練習に入ります。

「はじめまして」を模範文として発話。

学生全体に反復するよう、ジェスチャーで指示します。

クラス全体での3回リピートを1セットか2セット行い、次に個人を指名し、発話させます。

様子を見るため、大クラスでも全員を指します。

「私は自分の名前です」は飛ばし、「どうぞよろしく」を前と同様にリピートします。

 

次に出席簿を学生に見せ、名前を確認しながら、「私は…?」とヒント文の形で学生にキューを出し、「私は自分の名前です」の文を引き出します。

出席をとりながら、全員に自分の名前を言わせます。

これが、初級第1日目の授業の最初の20分ほどの内容です。

 

学習者は、上記の表現が初対面の挨拶ということは推察できるが、

「はじめまして」「どうぞよろしく」の意味を完全に理解できるわけではありません。

そもそも、これらの詳しい意味を直接法で伝えるのは不可能です。

私は、練習が一段落したところで、学習者の母語に翻訳したものを配布し、理解の定着を図ります。

2.水が飲みたいです。 の教え方

2の「水が飲みたいです」(タイ形)の導入には演技力が必要です。

まず、ホワイトボードに大きく太陽の絵を描きます。

そして、次のように発話します。

「暑いです(汗を拭くふり)。

私は歩きます。

1時間、2時間、歩きます。

でも、水がありません。

水、水…(空のペットボトルを示す。)私は水が飲みたいです。」

 

 

上記、『みんなの日本語』の 絵カードE20を使うこともできますが、演技は必要です。

(続く)

荒川友幸
東京明生日本語学院 養成科主任
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