日本語教師養成科
Japanese Teacher
明生コラム
団体概要
コースの特長
就職状況
〒130-0021 東京都墨田区緑1-2-10
次の文の導入について考えます。次の文を直接法でどのように導入したらいいでしょうか?
1.はじめまして。
2.水が飲みたいです。
3.東京タワーよりスカイツリーのほうが高いです。
4.私は日本語が話せます。
1の「はじめまして」を直接法的に提示できる状況は1回しかありません。
すなわち、教員と学習者が初対面するときです。
初級の授業の第1日目、期待に目をきらきらさせている学生たちの前に立ちます。
教員は満面の笑みを浮かべ、学生たちを見回します。
そして、いきなり、「はじめまして(ゆっくり、はっきり、大きい声で)。
私は自分の名前です(「私」を発話したところで胸を軽く叩き、自分の名前を言うときは胸に付けたネームカードなどを示す)。
どおおおぞよろしく(直感的に意味をわからせるため、お辞儀などをしながら気持ちを込めて)。」と発話します。
「はじめまして」という言葉を理解させなければならないようなクラスは、完璧なゼロ初級なので、直接法の状況では、教員と学習者の間に共通の言語はありません。
教員が前述の発話を行うと、学習者はきょとんとします。
それでも教員は自分のペースを崩さず、満面の笑みを浮かべたまま、発話を繰り返します。
この時点で学習者は、上記の発話が初対面の挨拶であろうということを推測します。ここで教員は反復練習に入ります。
「はじめまして」を模範文として発話。
学生全体に反復するよう、ジェスチャーで指示します。
クラス全体での3回リピートを1セットか2セット行い、次に個人を指名し、発話させます。
様子を見るため、大クラスでも全員を指します。
「私は自分の名前です」は飛ばし、「どうぞよろしく」を前と同様にリピートします。
次に出席簿を学生に見せ、名前を確認しながら、「私は…?」とヒント文の形で学生にキューを出し、「私は自分の名前です」の文を引き出します。
出席をとりながら、全員に自分の名前を言わせます。
これが、初級第1日目の授業の最初の20分ほどの内容です。
学習者は、上記の表現が初対面の挨拶ということは推察できるが、
「はじめまして」「どうぞよろしく」の意味を完全に理解できるわけではありません。
そもそも、これらの詳しい意味を直接法で伝えるのは不可能です。
私は、練習が一段落したところで、学習者の母語に翻訳したものを配布し、理解の定着を図ります。
2の「水が飲みたいです」(タイ形)の導入には演技力が必要です。
まず、ホワイトボードに大きく太陽の絵を描きます。
そして、次のように発話します。
「暑いです(汗を拭くふり)。
私は歩きます。
1時間、2時間、歩きます。
でも、水がありません。
水、水…(空のペットボトルを示す。)私は水が飲みたいです。」
上記、『みんなの日本語』の 絵カードE20を使うこともできますが、演技は必要です。
(続く)